今日はフジカ35SEの分解修理をしました。
かれこれクラシックカメラにどっぷり浸かるようになってから7年近く経ちますが、未だに富士写真フイルム(富士写真光機ではないんだね)フジカのレンズシャッターカメラには全く縁がなく、知り合いにいただいたジャンクのフジカ35MLを持っていたくらいです。
このカメラはレンズに非常に定評があります。
巷に「フィルム屋のカメラにはハズレがない」とよく囁かれていますが、フジカ35MLやフジカ35SEのFUJINON 45mm F2/F1.9は一段とささやかな人気があるレンズだったりしますね。
インターネット上にいくつか作例写真が上がっていますが、どの写真も非常に整ったコントラストでボケ味も美しく、非常に優れたレンズであることがうかがいしれます。
富士写真フイルムのレンズ設計者といえば、FUJINON 50mm F1.2の土井良一氏が有名ですが、このレンズはどなたが設計されたのでしょう。
カメラのデザインはフジカ35Mに引き続きフジペットのデザインなどで有名な東京芸術大学の田中芳朗氏が担当されたそう。
この時代からデザインでいえばミノルタカメラのデザインをされたKAKや、キヤノンカメラのデザインをデザインをされた川田龍宥氏、そしてズノーペンタフレックスのデザインをされたG.K.インダストリアルデザインなどデザイン専門家が積極的にカメラのデザインに参入してきた時代です。
そして極め付きはシチズンMLTシャッター
国産で初めて無制限1/1000を搭載した国産最高級シャッターです。
誇らしく1/1000の表記とF1.9の表記があります。
国産のシャッターは戦後、精工舎やコパルのシャッター、亜流では日本光測機のシャッターが有名でしたが、1955年ごろからシチズン社もシャッターの製造を始めたようです。
後にミノルタユニオマットに採用されたオプチパーユニシャッター、ハイマチックに採用されたオプチパーユニEシャッターなど名機を生み出します。
絞り羽、シャッター羽根ともに油がまわり固着しているジャンクの個体を購入してきたのでシャッターの観察をしたい私としては好都合。
シャッター各部品とシャッター羽根、絞り羽根を分解洗浄しました。
シチズンシャッターで変わっているところといえば、羽根の先を僅かに曲げてあるところ。5枚のうち3枚がこの形状になっており、中間の2枚は平らなままです。間違えて組みたてると羽根が傷だらけになりそう...。
絞り羽根も同様に洗浄します。
LV方式のような作動をする機構のため、無理に動かしたのか絞り羽根が外れていました。無理に動かすと破損することもあるので注意です。
絞り羽根を組み込みました。
組み立てたシチズンMLTシャッター
仕上げも見事で国産では第一級をいくシャッターだと思います。
戦前の材料も加工もおぼつかなかった時代の国産レンズシャッターをみていると立派になったものだと思います。
当時のシチズン時計で有名な腕時計はシチズンホーマーでしょうか。
腕時計のムーブメントが真鍮にニッケルメッキを施したものに対して、腕時計でいう地板までアルミで作られたレンズシャッターでは加工も似て非なるものだったと思います。
カメラを組み立てシャッターテストです。1/1000です。
1/500よりは若干早いくらいの速度ですね。経年でスプリングが弱くなっているのでしょうか。もとから?
1/1の実測値です。このほか各速度も正確に出ていました。
今回はシャッターの興味だけで分解修理しただけですが、ファインダーも非常にコストの掛かったプリズムをビームスプリッターに使用したものが使われていました。
キヤノンのキヤノネット以前にはこうしたカメラも数多くありましたが、キヤノネット以後はどこもコスト圧縮に夢中になったのかこういった手間のかかったカメラは少なくなってしまいます。