にこらのブログ(カメラ修理館)

クラシックカメラを修理、収集している学生のブログです。

初期型ペンタックスSPの分解修理と戯言

 

 

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なんとなくカメラセットを購入したら入っていたペンタックスSPの初期型。

ナンバーは1006000台。最初期というわけではないですけど初期型の特徴を兼ね備えたものです。

 

ペンタックスSPといえば当時世界で一番生産された一眼レフで総生産台数は400万台ともいわれますね。

 

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初期型の特徴とも言える露出計スイッチ

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マウント部のネジ

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後年のSPではなくなっています。

ちなみにSPFでは復活してたり。

個人的にSPは好きですが開放測光になりより配線が複雑化した(&地味に安っぽい...)SPFは嫌いなんですけどSPでは前板とシャシーの間にワッシャをいれ調整していたフランジバックSPFになりマウント部で調節するようになったため分解修理する上では若干楽ではあります。

 

ちなみにこの初期型SPはマウント部のネジが有る上前板とシャシーの間のワッシャも健在でした。期待した僕がばかでした...

 

それ以上に配線が...

 

youtu.be

 

 

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トップカバーを外しました。

ペンタックスSPは20台以上やったのでトントン拍子で進んでいきますが、カウンター部の構造がまるで違ってニコンFのようにトップに枚数板のリセットゼンマイがある仕様で...面食らいましたね()

 

肝心の写真を撮るのを忘れたんですが中央上にあるのがそのゼンマイ。

二年前の一番初めにカウンター自動リセットのついたペンタックスSV、S2 Superでも巻き上げレバーの着脱でいちいちゼンマイを巻き直す必要のある頓珍漢な設計じゃなかったのでSV設計以前から設計されていたんでしょうね…

 

ちなみにニコンFでは巻き上げレバーの着脱でいちいちゼンマイを巻き直す必要のある仕様ではありません。

 

その上気がついたのが露出計の配線が緑色のエナメル線なところ。

うわ~切っちゃいそう...

 

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プリント基板使用のファインダー露出計一体ユニットはまるで配線が違いますね。

ここらへんは中期と後期でもまるで違うので逐一改良されていたんでしょうね。

回路追ってみたらペンタックスSPご自慢のブリッジ回路じゃなかったりするのかしら。

時間がないのでやりませんでした...

 

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これが後期の回路、中期だとCITIZENのロゴがあったりメーターの挙動がまるでちがうものであったりします。

 

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ダイヤル部分。まるで違う...

ペンタックスSP独自のスマートな設計も初期は洗練されていない感じががが

 

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スローガバナ、中期と変わらん

後期になると材質が一部変更されていたりしますね。

Kシリーズになるまで形状は変わらなかったり(うろ覚え

 

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ミラーボックス。

前期とは挙動がまるで違いますね。

 

全般的にスプリングが強く非常にうるさいです。

カラランッ!というペンタックスSPらしい音はしません。

 

前期と同様手で押し上げることの出来ないタイプです。

 

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ちなみにペンタックスS2等同様傷の非常に付きやすい蒸着のミラーです。

知らん顔して後期の部品取りと交換しました... 

 

 昭和38年4月のアサヒカメラ内のカメラショー特集でアサヒペンタックススポットマチックの記事が載ってましたが、外観は市販版とほぼ変わらずおたまじゃくし状の直径3mmほどの受光部をスクリーン上に出すことによる測光を採用してました。

 

しかし受光角が3°と非常に狭く熟練を要すること、視野上に受光部が現れる不快感から製品版では接眼部にcdsを取り付けることによる平均測光へと仕様変更されました。

 

TTLというのもの自体が非常に先進的なもので「スポットマチック」の名前ばかりが広まってしまったので平均測光の製品版もスポットマチックにしてしまったという逸話がありますね。

 

ちなみに昭和38年4月のカメラショーから一ヶ月後にはTTL測光のパイオニアトプコンREスーパーが発売されていたので後発イメージを植え付けないための作戦だった...のかもしれませんね。

 

部分測光を採用したのはキヤノンであれもスクリーン上のコンデンサーレンズをカットし内部にハーフミラーを埋め込むという高度な技術によって可能にしましたが、中央部が四角く暗くなるのは避けられませんでしたね。

部分測光だと全体の一部の露出を取り出すため画面全体を部分で測り作画意図に合わせ撮影者がラチチュードを勘案し露出を決定する...なんてプロセスをたどる必要がありました。

結果的にキヤノンFTは玄人向けカメラ(キヤノンブースター等の存在も含め)となったわけです。

 

もしペンタックスSPが平均測光を採用しなければこれほどの大ヒットはありえなかったんじゃないですかね。

ペンタックスSPやニコマートFTn、ミノルタSRT101と高度経済成長期のこの時代を10年の長期にわたり彩り続けた名機はどれもTTL測光に各社の工夫と思惑があって面白い時代じゃなかったんじゃないかと思います。

 

参考:カメラレビュー編集部,「適正露出への挑戦」,朝日ソノラマ,昭和59年