キヤノンが1961年に発売し大ヒットを飛ばしたキヤノン キヤノネット初代です。
用意した1週間分の在庫が僅か2時間で完売という
この個体は480000番の2代目となります。
ASA感度が200までしかなく、ガリガリ音がしなく、絞り表示がある個体でした。
当時はネオパンSSが事実上の標準でよくてネオパンSSSまでしか使わなかったんでしょうね。多少は余裕を持ってほしいところですが、EEカメラだからなのかな?
現金正価18800円、速写ケース1700円でした。
現金正価と定価が分けられているあたりに時代を感じますよね。
キヤノネット発売直後にヒットを確信してか別の用途に取得していた茨城県取手市の土地にキヤノネット専用工場を立てたものの、発売から2年経ってようやく品不足が解消されたという大ヒットぶり。
発売から二年半が経過した1963年中頃には遂に100万台を達成。
大ヒットの理由はなんてたって露出計連動マニュアルカメラ(F2帯)が22000~27000ほどだった当時に自動露出付き、品質も保証されている高級機メーカー製で18800円ですからね。売れないわけがない。
CANON SE 45mm F1.9は4群5枚構成です。
当時(ていうか今もか)F2クラスのレンズは6枚構成が通常でした。
コストダウンの影響なんでしょうね。写りは解像度は悪くないけれど薄味という印象のレンズです(末に作例載せました)
まぁ、高級機のCANON VI-L用のCANON 50mm F1.8IIがダブルガウスの4群6枚構成のためにその差別化だったりするのかもするのかもしれませんが。
このあとコニカも5枚玉に追随しHEXANON 47mm F1.9をコニカ SIIIならびにコニカオートSに搭載しました。コニカS、SIIではIIIAと同様の4群6枚のレンズが付いてましたね(風巻氏設計と噂の)(非常によく写ります)
レンズボードを取り外した本体シャシー
完全に本体とは分離できる距離計であったり、レンズボードと本体露出計は接点で繋がっているためにハンダが必要なかったりユニット化が進んでいます。
露出計連動範囲外であればレリーズロックが掛かったり巻き戻しボタン自動復帰であったり使い勝手にも配慮されている印象です。
ASA100、1/60で縦にレンズボードと平行になるようにします。
多くのレンズシャッターカメラでは前玉と花形を取り外すとシャッターにアクセスできますが、キヤノネットの場合はスローガバナーの粘りでも絶対に取り外してはなりません。この露出計連動レバーがあるからです。
ちなみにマミヤルビー、スタンダード等の機械式追針露出計搭載機も同様です。
あれ、面倒なんですよね ...
親の顔より見たコパルSV
非常に組み立てやすいシャッターで何度やっても驚きますね...
スローガバナー、セルフタイマーは取り外し脱脂後給油
コパルSVにはスローガバナーのネジが3本のものと2本の物があり、スローガバナ下の2つ穴ワッシャーの組み立て性が上がってる(ネジの代わりに出っ張りで位置固定できるようになっているため)のでそういう改良でしょうね。
キヤノネットはヘリコイドがむきだしになっているために羽根に油が回りやすいのですが、この個体も案の定そうなっていました。リンクを外したあと脱脂~
前板のヘリコイドユニット
いくら羽根油を取り除いても元凶のヘリコイドの油が古いままだと程ないうちに再発してしまうのは想像に難くありません。脱脂した後ヘリコイドグリスを塗って組み立てます。
露出計連動レバー取り付けていませんがレンズ側は完成。
ブライトフレームがガタつくと思ったら外れていました。
接着剤で固定してヨシ
キヤノンの革って接着剤が異様に固くこんなきちんと剥がれるのは久々です。
大体引っ張って歪んでしまうんですよねえ...
レンズ前玉の擦り傷がひどいので部品取り機から拝借してきました。
部品取り機も一枚目と二枚目の間、一枚目がカビていたので清掃。
きれいきれい
1/500と1/1、組み立てるだけでこれだけの精度出るんだからコパルSVはすごい。
どこぞのどっかのシャッターは下手に組み付けると開かなかったりしますしね...
セレン露出計もキヤノネットは死んでいるのを見たことがないんですよね。
この個体も1/3段とかその範囲ではわかりませんがデジタルカメラと比べてもそれなりに作動しています。ちなみにキヤノンは他社が露出計メーカーに製造を依頼する中自社で露出計素子を製造していました。
そのため1962年頃(ミノルタSR-7 ニコンFフォトミック等)流行したcds化の波に乗れなかったりした(開発完了が1964年になってから)のですがね...
ゼロックスが普通紙コピーを特許を振りかざし独占した中、その特許をかいくぐりキヤノンが普通紙コピーを発売できたのも自社でのcds開発があったからです。
現代も自社製センサーにやたらとこだわっている印象がありますが、そういう歴史があるからこそなんでしょうね。