先日、にこる君とニコン大井製作所跡地を見に行ってきました。
...なかなかに意味不明なムーブですが、今月初めに行ったキヤノン下丸子本社(あれも工場ないけど)に次いでのクラカメ工場の聖地巡礼とでも言えば良いんですかね。
日本光学大井製作所に来てみました(何もない pic.twitter.com/gfxXCwbdaq
— にこら (@nikora060) 2021年5月10日
ライカIIIfにニッコールP.C 8.5cm F2.0を着けて大井製作所に突撃
それなりに知ってる人ならわかりますよね...このネタ
当然ですが、跡地はまっさら、なにも無くなってましたね。
動画中頃に登場する古い工場風景は大井製作所で撮られたものでしょう。おそらく。
ほんとに何もない…… pic.twitter.com/G0T6qUa80H
— にこら (@nikora060) 2021年5月10日
ここで数百万台という名機が生産された面影は何もありません。
感慨深いなあ...
話は変わって、その謎会の前ににこる君から手渡されたもの。
ペトリV6 2台。
1ヶ月前、作動するペトリボディーを持っていないというのでペトリV6(あれはロゴの違う後期でしたが)を差し上げたら、色々あり2台になって帰ってきました。
「価格は半額、性能はニコン!」が取り柄だったメーカーです。
ただ1/1000と1/1は付いてないです。付加しても大して価格は変わりそうにないですが...キヤノンがキヤノネットを発売するとき業界からの反発を喰らったことを思うと削らざるを得なかったのかもしれません。
ペトリペンタVでは1/1000のクリックがあったりするという話...
なんてたってニコンFアイレベル(Nikkor-H Auto 50mm F2付)が69,400円だった当時に、ペトリV6(C.C Auto PETRI 55mm F2付)は21,600円ですもの。半額どころか3分の1以下ですね。
1/1000がない?1秒がない?モータードライブがつかない?フォトミックファインダーがつかない?うっせーわ、あなたが思うより実用的です(珍しく流行りに乗る
初めは「ペトリV6もらった!ばらした!カムシャフトおもろい!うつりいい!いえい!」というブログを書こうとおもったんですが、価格などなどの事前情報を調べるべくネットサーフィンしていると「トイカメラ」だの「安物」だのこりゃまた酷い言われよう。あましにもいたたまれなくなってきました。
あまりにもめちゃくちゃな言われようをするカメラな物で、私自身も長らく偏見を持っていたんですよね。値段もニコンの3分の1ですからそんなものかと。
今まで国産一眼レフなら有名どころは大半分解してきましたが、作りは並で良い部類だと思います。量産効果を上げるためかスクリーンはニコンFのようにフォーカシングスクリーンとコンデンサーレンズがまとめられたユニットになっていたり、理想を追い求めてミラーと自動絞りの連動はエンジンのOHVのようにカムシャフトとなって作動したりと兎に角考えられた構造。
ニコンF3が縦走りシャッタを採用しなかったのは横の動力を縦に変換するのは故障の発生原因となるため耐久性面で好ましくなかったことで不採用、ハンザキヤノンでは独ツアイスのコンタックスに倣い前面に巻き上げノブを採用しようとしたところベベルギアを採用すると耐久性が劣ったことで不採用になったことはよく知られています。
そのベベルギアを採用してこれだけ安定した作動を実現できるのはとんでもない技術力だと思うんですよね。
んでシャッター精度
一応、シャッター軸の油を交換し、幕速調整を施したあとの計測結果です。
「幕速調整を施しちゃ意味ないじゃん」と思うかもしれませんが、シャッター機構の精度設計が悪ければ、目盛り値1/60で1/64が出たとしても目盛り値1/500で1/512ではなく1/376が出たり先幕がバウンドしたりとシャッター精度にばらつきが出てくるものです。実際そういうシャッターは思っているよりも多いものです。
その上経年でスプリングドラムも弱っているでしょうから、調整は必須ですよね。
調整で復帰できるとしたら尚更品質の高さが証明されるわけですよ。
1/500(1/512sec)
1/125(1/128sec)
1/30(1/32sec)
1/2(500ms)
低精度なんてとんでもない、電子コパルスクエア並の精度です。
「どうせ何度も測っていい成績のだけ写真撮って載せたんだろ?」
何度測ったってこれくらいの精度出るんだよなあ...
手元のV6もう一台とV6II両方とも安定してこれと同等の精度が出ていました。
最後に作例を。
PETRI V6II + C.C Auto PETRI 55mm F2.0
APX100(D-76 9:00 20℃)
PETRI V6II + C.C Auto PETRI 28mm F3.5
APX100(D-76 9:00 20℃)
機材名を隠されてライカにズミクロンを着けて撮った写真と並べられたら50mmレンズをぎょうさん買ってきた僕でも見分けられる自信ないです。正直...
まぁ、今となっては国産カメラの花形であったNikon FとNikkor-H 50mm F2.0のセットでさえもフィルム十本分で手に入るわけで(ましてやニコマートならタダ同然)擁護するのも今更感が否めないわけですが。
今まで偏見の目を持ってペトリというメーカーを見ていたのが恥ずかしくなるほどです。低価格で品質の安定したカメラを供給する、大衆機メーカーとして最もあるべき姿ではないでしょうか。
徹底した低価格戦略の結果、労働争議により破綻してしまったわけなんですがね。
先の大井製作所の話題に戻りますが、世界2大カメラメーカーのニコンですら大井製作所だけではなく先日仙台ニコンの業務転換に伴って国内でのカメラの生産から撤退しました。
ニコンですらこの厳しい荒波に揉まれているわけで、体力のない中小カメラメーカーは初めから淘汰される運命だったのかもしれません。しかし素晴らしい製品と大衆へカメラを普及させたという功績は永遠だと思うんですよね。