にこらのブログ(カメラ修理館)

クラシックカメラを修理、収集している学生のブログです。

キヤノンフレックスRMの修理と余談

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昨日は新宿キタムラ写真機店のジャンク市に行ってきました。

20分おきに7人交代制というあんましなやり方でちょっと不満でしたが。

 

そこでキヤノンフレックスRM R50mm f/1.8付きがお安かったのでゲット。

アタマをぶん殴られ凹んだようなジャミラ的なデザインは現代のEOS RPに通ずるものを感じます。キヤノンフレックスを使っていたのでゴシック体ロゴは特段違和感は感じませんが一般の人が見ればおかしさを感じるかもしれませんね。

 

あんまし調子が良くないので修理していきましょうかね。

 

スーパーキヤノマチック R 50mm f/1.8付きです(強調

 

世界で最も進歩した スーパーキヤノマチック機構

完全自動1/15の最高速!

 

あなたののぞくファインダーが

ホンの一瞬

目ばたきする間に この5作動が行われる

世界最高速のメカニズム!

 

がキャッチコピーでした。

キヤノンフレックス登場ごろは完全自動絞り搭載一眼レフはニコンFとズノーペンタフレックスくらいしかなかったと思いますから仰々しい名前を付けたくもなったんでしょうね。

 

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レンズシャッター一眼レフじゃあありませんけど、フィルム巻き上げ時に①のレバーで自動絞り用スプリングがチャージされ②のレバーでレリーズ時絞り込まれるわけです。

 

本体側の②レバーはミラーが上昇している最中のみ作動しますからミラーが降下するに従い絞りが解除されます。

 

他社の自動絞り機構に比べレンズ側にチャージ機構を持っているわけで本体のみならずレンズマウントの公差が要求されコストも下げにくかったんじゃないかな。

次期作のキヤノンFXではFLレンズシリーズになり他社と同等になります。

 

なまじ他社より製造技術の高いメーカーがとち狂った機構を採用すると面白いですね。

 

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露出計連動用の銅リボンが取り回してあります。切れやすいのでだいっきらい()

この銅リボン、何を思ったか後継のキヤノンFXでも使われていたりしますね。

 

露出計は外さないのが正解のようです。

露出計針部分おもてのアクリル板を外すと丁度ファインダーブロック部分を固定しているビスにドライバーが挿せるよう穴が空いています。

 

ちなみに後継のキヤノンFXは外さない、FTは外すのが正解のようです。

キヤノンのカメラは頭を使わないと即死するんで嫌い(((

 

キヤノネットなんかは構造が理解できると生産性の高さに感動しますね。

 

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キヤノンフレックスは高速時でもレリーズ時にシャラン!という独特な音がしますが、それはこのミラー緩衝ガバナーによるものです。

 

「また ミラー作動時にはガバナーが作動して ショックを完全に防止する安定機構もキヤノン独特といえましょう」(byカタログ

 

キヤノンフレックス登場時、寒冷地で使用するとミラーの作動が途中で停止する事故が多発したため評判が悪かったとありますが十中八九こいつが原因だと思います。

 

てかカタログに「ガバナー」なんて単語使って一般人わかるものかね?

 

現在キヤノンフレックスの作動個体が減っているのもこれの油切れが原因なんでしょうね。調子悪いのは明らかに大きな音がするのでわかると思いますが。

 

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ミラーが上昇する最後、写真のレバーが押され緩衝するわけですが

キヤノンフレックスの構造的にミラー作動スプリングは

 

1.ミラー作動

2.ミラー下降スプリングのチャージ

3.シャッター掛かり止めレバーの解除

4.レンズ側自動絞りの作動

 

を行っているわけです。1~3までは一般的な一眼レフと変わらないのですが、4があり、かつ3はミラー作動最後の余力で行います。寒冷地では緩衝ガバナーの作動が重くなり(油)シャッター掛かり止めレバーを切り離す余力が残っていないわけですね。

 

それでミラーアップで停止すると。

まあ、レリーズボタンを押しながらミラーを手で押し上げてやれば復帰するわけですけど。

 

その点オリンパスOMなんかの空気圧ダンパーなんかはよく出来てますね。

寒冷地でもそこまで問題にならないようで。

 

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キヤノンフレックスではガバナーは手前に引っこ抜けましたがRMで取ってつけたような巻き上げレバーが追加されたおかげで手前から引っこ抜けず調速部まるごと取り去る必要がありました。X接点切り替え接点のハンダも外す必要があります。めんどくさ。

 

毎回キヤノンフレックスを見るたびに腕木で高速用偏心板を制御しているのにこんなんで精度でるのか心配になります。

なまじ他社より製造技術の高いメーカーがとち狂った機構を採用すると面白いですね(2回目

 

材質いいなあ。惚れ惚れする。

 

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上が例の緩衝ガバナー、下がシャッタースローガバナー

キヤノンV系列のガバナーを彷彿とさせて興奮しますね。え?しないって?

 

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下にテンションのかかる連動機構を持った構造上レンズマウントが下のほうが丈夫に作られていますね。へーんなのっ。

 

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そういえばキヤノンフレックスRPでは前板を留めるビスの位置を間違えると(一本だけ短いため)シャッター軸にあたって後幕が破断するとかいうトラップが合ったりしましたがRMでは全て共通となったようです。

 

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チューブ3本で防塵してあります。

モルト使われるよりマシですがもっとどうにか...(ry

こういう精密部分に接着剤を使うと戻すと緊張するんですよね。

 

スプリットプリズムスクリーンです。

 

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触っていて気が付きましたがX接点が1/60になっています。

ベースはR2000なんですね。

 

ちなみにキヤノンのカメラはX接点シャッタースピードが別個で付いているのが多いですがアレ特許だったりします。今なら実用新案止まりだよなあ。

 

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X接点が1/55→1/60に向上したからかボールベアリング軸受に変わっていました。

それよりも先に幕の取り回しをどうにかしたほうがよか(ry

 

キヤノンの4軸フォーカルプレーンはF-1改良型の頃まで底部を主体に3軸フォーカルプレーンの様に作られておりますが、あれはキヤノンフレックスがトリガー巻き上げだった名残なんでしょうね。

このキヤノンフレックスRM、並びにキヤノンFXで上部主体に作っていれば、まるで方向性は変わっていたんでしょう。

AE-1、New F-1は全く設計思想としては異なってきます。

 

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それで冒頭の状態に戻りました。

 

次期作キヤノンFXからは完全にシャシーの再開発が行われこのゴシック体ロゴもなくなり至って一般的な一眼レフになってしまいます。(ただシャッター機構にはキヤノンフレックスの面影が強く残っている...F-1なんかでも

 

先程の「ガバナー」という専門的な用語を使用したカタログといい、世界最高速の完全自動絞り等々まだキヤノン内部で設計者の発言権が強くやりたい放題できた時代だったんでしょうね。

 

根本的なところを言えばブリーチロック(スピゴット)マウントなんかもその最たるものだと思います。摺動面を持たないため何度着脱しても光学的精度が狂わないというのが売りだったようですが普通そんな回数着脱しないでしょうにと。

 

あとは低フランジバックニコンF 46.50mm、キヤノンR 42.00mm)マウントでしょうかね。当初からミラーが短くミラー切れが激しいという評判で残念ながらF-1でもミラー切れが激しかったという評判です。

ニコンFも現代でこそフランジバックの長さが取り沙汰されることが多かったものの、一眼レフが望遠等の特殊用途に向けて登場したという経緯を考えれば妥当だとは思いますがね。

 

先程問題に上げた緩衝ガバナーもレンジファインダーカメラを作っていたキヤノンからすればミラーショックは大問題に感じたんでしょうね。その結果、半透明ミラーでそもそもミラーの駆動をなくしてしまおうというキヤノンペリックスに通じるわけですが。

 

 

 

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