リコーのサンキュッパをお求めの懸命なるあなた
無駄と飾りを捨て実質の優秀性によく気が付かれた
まだお持ちでないあなた
神の祝福を
リコーのサンキュッパ
ここを読まれる方なら説明要りませんね
リコーのサンキュッパことリコーXR500の分解修理をしたのでその紹介と戯言...いや余談です。
話によると世のサンキュッパの語源らしいですね。
リコーフレックスに始まるリコー低価格カメラ史の中の一台ですが、1978年というキヤノンA-1に代表されるマルチモードAE機種が出始めた頃、なんと1/500-1/8,Bという1960年代でも嫌厭されるような性能で登場し、その上一斉を風靡したというから驚きを隠せません。
一応、1970年代の機種ですから開放測光TTLは搭載しているんですがね。
それをCM内では「無駄と飾りを捨て実質の優秀性」と表現しているわけですが。
まぁ、言われてみれば不便はしないかな...?凝らない分には。
そこで気になったのは1970年代後半発売の比較的新しい縦走りフォーカルプレーンシャッターの機種となりますが、社外から購入するユニットシャッターはどのような物が使われているかということですね。
リコーXR500は実は1/1000まで搭載されているものの、本体側のクリックが1/500までで制限されているのは有名な話。
しかし1/8までしかないスロー側は果たしてスローガバナーは省略されているのか特殊な物が使われているのか気になるところです。
さすが70年代後半の機種だけありフレキ電装です。
実のところ、幾度か整備したことがありトントン拍子でミラーボックスまで外せました。ただ若干定石とは違う箇所があるので注意が必要。
ふつーのコパルですね。
ラックとピニオンでチャージする旧型のコパルスクエアSではなく、レバーにてチャージされる新型のコパルスクエアCCSのような機種ですね。
というかベース機はコパルスクエアCCSでしょう。
コパルスクエアCCSはふつーな1/1000-1/1,Bのシャッターですが...
1/8はアンクル使用の速度ですからちゃんとアンクルも付いています。
大抵の廉価シャッター(時代は違うけれど)が1/15前後までなのはアンクルが省かれているからですね。あれに関してはコストダウンが理にかなっているんですが。
もしかして1/1付きのノーマル仕様と変わらないのでは?
スロー側の輪列切り替えの機構もそのままです。
幕速が高速化してから多くの機種でガバナーは2段ないし3段切り替えになりましたが、シャッタースピードダイヤル側の偏心板は1/8までの仕様のため切り替わらないようです。つまるところ、シャッターはベースはCCSの1/1000-1/1,Bのまま、特注で設定を1/1000-1/8に制限、それを本体側で1/500-1/8に制限しているのです。
ほんと姑息なことするなあ...
もはやこの時代のユニットシャッターは機械による自動組立ですから、かえってスローガバナー側の設計を変えた廉価仕様を作る方が労力がかかるのかもしれませんね。
偏心板の仕様を変えるのはそのまんま部品を入れ替えて組み立てれば良いだけですから。
気になるのはシャッターの仕様は1/1000-1/8になっているということです。
姉妹機のリコーXR1000S(並びにXR-2)は電子シャッター機種でしたから無関係、XR-1は1/1000-1/1,Bの1/1まであるフルスペックシャッターで1/1000-1/8の機種は無いんですね。実はXR500は企画段階では1/1000まで搭載予定だったものの、構想が進んでいくうちに1/1000が省かれた可能性があるのです。
そもそも39,800円という価格も40,000円以上から課税される物品税を避けるための戦略的な価格設定だったことを思うと、価格は39,800円固定、他社からの反発を防ぐためのスペックダウンだったのかもしれませんね。
気になったシャッターの仕様は確認し終えたので組み立てます。
ミラーボックスです。ダイカストでしっかり作ってありますね。
トップカバー他の感触はチープでも壊れそうにありません。
「無駄と飾りを捨て実質の優秀性」ですなあ。
ミラーはミラー切れを防ぐスイングバック式になっています。XR-1と設計は同一のハズですから設計者も凝っていたのかな。スイングバック式はミノルタNew SRやコニカFPなどで採用例があります。
ただKマウントはフランジバックが45.50mmもあるわけで、ミラー切れが問題となったキヤノンR~FDマウントの42.00mm、コニカマウントI/IIの40.50mmなどより余程長いのです。意味あるの...?
ちなみにXR-1から絞りプレビューも省かれていますが、こちらは人間が組み立てる箇所だからかちゃんと省かれていますね(写真中央上)
レリーズ連動レバーは最初から曲がっていました。誰か知らんけどへーたくそー
連動レバーしたの銅板はあとから貼り付けますが連動を確認して取り付けないといけないのです。
プリズム、露出計ユニット。オールプラスチックです。
あと気になったのはやたらマジックペンが使われている箇所が多いことですね。
アパーチャーの反射防止部分、露出計のcds部分とマジックペンが多く使われています。さすがにそこは...?
シャッタースピードダイヤルの連動と左右の露出計連動を確認しつつペンタプリズム、露出計ユニットは組み立てますが、Bでやったほうが組みやすいようです。
以前こんな記事を書きましたが、
デザインだけでなく内部機構も枚数盤ユニットはニコンF2に似ていますし、ミラーボックスのチャージ機構はニコマートFTに酷似しています。どんだけニコンに感化されてるんだか...
見方次第でいろんな見方ができるカメラという印象がすごかったですね。
本来1/1000-1/1まであるフルスペックシャッターを搭載しつつも意図的な制限で1/500-1/8まで抑えているあたりに姑息という見方もできれば、物品税による価格上の都合と販売上の都合、製造上の都合を考えると合理的という見方もできますし。
手を抜くところはしっかり抜いてあり、逆にしっかり作るべきところはしっかり作ってあります。仕様は古臭くとも1970年代後半の自動生産技術の発展や樹脂技術を上手く取り入れているのは中々に興味深かったですね。
リコーXR500はコニカ現場監督等が登場する以前、工事現場での作業工程の写真に多く用いられていたという話を聞きますが、要は手荒で過酷な使用条件で故障しにくく且つ安価で最低限の性能を持つことが評価されたんでしょう。XR500が意図するところにまさにフィットしているように思うんですよね。
現役時代に生まれていれば一台は買ってみたかったかな...?