にこらのブログ(カメラ修理)

クラシックカメラやセミクラシックカメラを収集、修理しています

Nikon F90Xにて高円寺撮影

先週末のこと、友人が京都から東京に来たついで私の家に泊まっていきましたが、かれこれ3時間ほど話した末、いざ寝ようという段になって「Nikon F90Xいる?」と言われました。

 

なんといっても他の方からもらう予定のNikon F90Xsのためにバッテリーグリップがほしかったらしく、付いていた丸窓アイピースと縦型バッテリーグリップを剥ぎ取って本体はいらないとのことです。

 

私もたまたまNikon F90X用のバッテリーボックスを持っていたためもらうことに。

というのも、かつて私も同じことをしたことがあり、丸窓アイピースとバッテリーボックスをもぎ取って友人に半ば押し付けのようなことをしたことがあったのでした。

 

 

Nikon F90Xという機種は発売当時定価138,000円もした当時の中級機種でけっして素性のわるいカメラとも思えないうえに、前代Nikon F90も含めればかの名機Nikon F100登場までの約8年間にわたって生産されたという実績も大したものです。

 

しかし、この趣味カメラ界隈のなかでは非常に評価がわるい、というわけではないもののなぜだか全く存在感のない、話題にすら上がらない機種だったのでした。

 

持病の裏蓋ベトベトを溶剤にて取り除いたあと、簡単に清掃するとそれなりに綺麗な状態にはなったので軽くシャッターを切ってみると非常に軽快なレスポンスとシャッターフィーリングで、意外と素性はわるくなさそう。

 

甲高い高回転コアレスモーターのシャッターチャージ音、低いフィルム巻き上げ音、高速なステッピングモーターによるAF動作が混在しているものの、あらゆるフィーリングが一台の中に共存しているわりには、さすが秒間4.5コマの巻き上げ速度を誇るだけあり、各連動が瞬く間に行われるさまをみて感動。

 

前代のNikon F-801に比べてシャッターボタン周りが一回り大きくなり、ずんぐりむっくりになった印象があります。

 

昨年発売されたNikon Z 8をみて驚きました。

いまだグリーンボタン2つ同時押しで撮影設定がリセットされる機能が残っていたことです。実はグリーンボタン2つ同時押しで撮影設定がリセットされる機能の始祖がNikon F90だったそうで、そのためかグリーンボタン自体が独立して搭載されています。ニコンカメラ使いでも知らない人が多い機能ですが一体誰向けなのでしょうか。

 

サービスセンターでサービスマンが設定を一つづつ元に戻すのは手間だから一括リセット機能を設けたとか、そういったところなんだと思っていますが、その割には独立してボタンが搭載されているあたり初期の方は初心者向けにセットされていたみたいですね。

 

このNikon F90X自体、Nikon F-801時代には中級から初級者向けにはNikon F-401やF-601といった機種を設定し三段階に分けたユーザー層を想定していたようですが、当時のアサヒカメラを覗くと

 

撮影モードは従来からのP,S,A,Mのほかに、イメージプログラムが新設された。キヤノンのEOSの系列にあるイメージゾーンに似た内容だが、初心者でも最初から高級機を購入するケースが少なくない最近のユーザー事情を反映したものだろう。

「アサヒカメラ1993年3月号」(朝日新聞社,1993)

と記載がありましたから、高級機の下位ユーザーへの波及にその発端があるようです。

 

思い返せば、当時のキヤノンEOS、それこそCANON EOS 10QDや5QDといった高級機であってもイメージダイヤルによる操作が一般的になっていたし、ミノルタに至っては最高級機種のMINOLTA α-9xiなどでもワンタッチPボタンなどを搭載していたことを思えば、さして不自然なことではないのかもしれません。

 

 

撮影はNikon F90XにAF NIKKOR 50mm F1.4Sを着け、ILFORD HP5+にてEI:400にて露光、富士フィルムスーパープロドールにて20℃にて7分30秒現像しました。

 

スーパープロドールという現像液はどうやら1985年ごろに富士フィルムの標準増感現像剤としてパンドールの後継として用意されたPQ現像液で、いまだ販売されている現像剤の中では安価でかつ液劣化も少なく、優秀な現像液です。

以前は自家調合したD-76をメインに使っていましたが、MQ現像液のD-76では夜間の撮影が多くなるとシャドーが持ち上がらず現像時間を押せばハイライトが崩れてしまうという使いにくさがあったものの、スーパープロドールではそういった心配がいらないのがいいですね。

1/8 F1.4にて撮影、きっとブレているだろうと思っていましたが、思いの外しっかり止まっていて嬉しい。

 

Twitterの引用リプで「優秀なんだけどかわいげのないカメラ」という評を受けましたが、たしかにそんな一面はあります。

 

フィルムを弾薬のように使い、自動小銃さながらに撮るスタイルが向いているカメラという印象を受けました。

デザインがいまいちパットしないこと、かわいげがないところを除けば、一般的なAF一眼レフに比べて非常にレスポンスのいいこと、またストレスなく撮影できる機能や操作系を備えていることにつけて非常に優秀なカメラだと思います。まぁそれは趣味の機械ではなく道具としてみたときに限るのですけどね。

 

Nikon F100がNikon F5ジュニアとして非常に世間では高い評価をうけ、ユーザーも未だに多いということを鑑みるといくら「かわいげのない」機種とはいえ、あんましじゃないかなとは感じましたね...。