にこらのブログ(カメラ修理館)

クラシックカメラを修理、収集している学生のブログです。

ニコン ニコマートFSの分解清掃

7月1日からTwitterに非Twitter Blueユーザーは600ツイート/日という閲覧制限が加えられたらしく、日曜日ということもあってアクティブユーザーの多い中での変更で大変な騒ぎになっていました。

翌2日午前4時からは1000ツイート/日に緩和されたものの多くのユーザーはソレで足りるはずもなく、イーロン・マスク氏就任以後不安定になる一方のTwitter運営の中、以前から注目視されていたMisskeyやMastdonは大盛況、Misskeyに至っては急遽サーバーを増設することになったそう。

 

さて未来は明るくないTwitterにとどまってられるかといわれれば、そうはいかず、移行先を考えたいにこらですが、ユーザーが散逸しているせいで行くところもなく、とりあえず2日正午ごろに数人で話し合い仲間内でわちゃわちゃできるDiscordサーバーを設置したわけです。

 

幸い支持を受け(71人...!?)、行く宛のない仲間たちはDiscordサーバーに集っていますが、閉鎖的な人間関係では馴れ合いに転化してしまうのは想像に難しくなく、どう新規のオタクを誘い込むシステムを作るか頭の痛い問題です。

 

Twitterの閉鎖的でありつつも開放的な会話の距離感...が文化部の部室に喩えられることがあります。親友と漫画の話で盛り上がったところ、通りがかりの先輩が気がつけば参加してきて...という距離感、あれはDiscordではどうも再現しにくい。

 

決定的にTwitterを代替する次世代SNSが登場すれば、一斉に流入するだろうけどなあ。

InstagramTikTokでは代替にならないんですよね。

部室の緩やかに流れる空気感はなく、昼休みのあと、クラスのお調子者がふざけているのを傍目に休日の話をクラスメイトにする、あの雰囲気に近いのです。似て非なるもの。

 

どうにかならんのかなあ。

 

昨年9月に、ニコン ニコマートFTの分解清掃について記事を書きましたが、ニコマートFTと同じ方から修理依頼です。

前回修理したニコマートFTが非常に品質が高いと評価してくれ、そのあとに希少なニコマートFSも入手したためオーバーホールを頼まれました。大変ありがたいことです。

 

nikora060.hatenablog.com

 

ニコン ニコマートFSは、1965年に登場したニコン ニコマートFTからTTL露出計を取り除き、廉価且つ露出計のない分、堅牢になった機種となります。

 

1960年代中頃は、こうした露出計省略形一眼レフをラインナップすることが一般的で、キヤノンカメラではキヤノンFXに対するキヤノンFP、旭光学ではアサヒペンタックスSPに対するアサヒペンタックスSL、ミノルタカメラではミノルタSRT101に対するミノルタSR-1s...と枚挙に暇がありません。

 

まだ内蔵露出計の測光精度に不信感を持つカメラマンが多かったこと、カメラの堅牢性が損なわれることを嫌ったカメラマンが多かったこと、できるだけ廉価な機種が求められた...など諸説ありますが、値段もそれほど大差ないものですから露出計内蔵機種のほうが販売台数は圧倒的に多く、ニコマートFTの129800台に対して、ニコマートFSは12900台と10分の1ほどしかありませんでした。

 

ニコマートシリーズはその後も販売が続けられますが、ニコマートFTと同時期にFSは生産が終了し、その後はTTL露出計内蔵のFTnのみとなったようです。

その後のニコマートFTn、FT2、FT3は合わせて1560800台も生産されており、出現率で言えば120分の1以下...中古市場では珍品として重宝されているという皮肉が...。

 

ニコマートFTnは、こういう趣味をしていると、ぎょうさん見かけますが、見かける台数に比して同系列であるFSを見かけないため、なおさら外観の奇妙さと珍しさを感じますね。

 

基本構造としては、ニコマートFTと同様のため難儀する部分はありませんでしたが、個人的にビビッときた前板部分に残っている外光測光式だった名残であるダイカスト穴。

ニコマートは1964年の企画当時は外光測光式として企画されており、発売直前になり急遽TTL測光式として規格変更されたという経緯があります。

後年のニコマートFTからはダイカスト自体が作り直されこのダイカスト穴もなくなっておりますが、この機体では健全ですね。

 

そしてスッキリとしたファインダー。

スクリーン、コンデンサーレンズともに超音波洗浄しました。

露出計非搭載のため露出計針はなく、シャッタースピード表示もFTnから追加されたため、なにもありません。

8°の扱いやすいマイクロプリズムスクリーン(ニコンではJ型スクリーンと呼ぶ)ですが、ニコマートFT初期同様にフレネルレンズが1mmあたり12.5本の目の荒いものとなっています。

 

比較用に後期型ニコマートFTのファインダー

ニコマートFTの露出系表示も前期型と後期型ではことなっており、前期型は+ -の表示がなく、ただの枠でしたが、後期型では+ -の表示が追加されニコマートFTnにより近いものとなっていました。

 

やはり、この時代のニコンの内面反射防止塗料はカビやすいらしく、凄まじいことになっていました。ミノルタの内面反射防止塗料のカビとは違い、塗料までは侵食されないため除去できるのが救いではありますが。

 

トップカバーのホコリ。この時代の多くのカメラは速射ケースとともに放置された機体が多いため免れていることが多いものの、この機体はそのまま放置されたようですね。

 

返却不要とのことでしたが、付属してきたNikkor-S Auto 35mm F2.8も清掃します。

個人的にニッコールオートの中でもAuto 35mm F2.8は描写があまり好みではなく、友人に譲渡しようかと思っています。鏡筒やレンズ自体は非常に状態がよく、それなりに仕上がりました。

 

やはり露出系窓が存在しないという...違和感がありますね。

心なしかシリアルナンバーに使用されている文字も違う気がします。

 

 

Nikkor-S Auto 35mm F2.8はm表記でした。当時からの組み合わせかな?

 

ニコマートFT(FS)でも前期型に当たる機体でしたが、各部の仕様や工作も後年のニコマートに比べると年代を感じさせるところや、若干華奢な部分もあり、日本光学のなかでも普及機に試行錯誤していた影を感じさせますね。

 

カウンター固定用のビスが後期型の鉄製ではなく、真鍮製であったり、コパルスクエアSのチャージ用ラックの材質が後期型の鉄製ではなく、真鍮製であったり、その周辺部の設計が異なっていたり...と細かくみていけば色々とあります。

 

機構だけを見るならば安普請なカメラに見られがちですがそこで浮いたコストを部材の向上に充てているようで一般的な普及機では真鍮メッキネジを使用するようなところであっても、アホほどでかい鉄ネジを使用、真鍮マウントではなくステンレスマウントを使用するなど結果として狂ったほど硬いカメラになってしまいました。

 

と書いた覚えがありますが、通常仕様では破損する箇所ではないあたり、こうしたつぶさな改良が後年のニコマートシリーズが硬すぎる普及機になってしまった所以なのかもしれません。