にこらのブログ(カメラ修理館)

クラシックカメラを修理、収集している学生のブログです。

本物(要出典)な英雄329 万年筆

英雄616が偽物だった話

nikora060.hatenablog.com

届いたころから異様に安価なこともあり疑っていたんですよ。

どうやら私が一ヶ月メインに使用していた英雄616は偽物だったようです。

Hero 616 – Mat's Pens

Pen Vault and Ink Cellar.: Real vs fake fountain pen : hero 616

Review Of Fake Hero 616 - Fountain Pen Reviews - The Fountain Pen Network

 

上のマットさんの記事が判別には非常に参考になりました。

二番目の「Pen Vault and Ink Cellar」さんの写真が私の英雄616(偽物)にそっくり。

偽物と断定しました。

 

こうなると、”本物の”英雄を入手したくてたまらない。

というわけで気がつけばもう一本ポチっていました。

 

今度は英雄329という1960年代末に日本で「中共万年筆」として席巻した機種です。

それはともかくとして中共製万年筆といわれる「英雄」その他の万年筆は、実に昭和四十一年秋から翌々年の昭和四十三年夏までの間に、なんと、昭和四十一年度に一一八、〇〇〇ダース、昭和四十二年度には倍増どころか、二二九、〇〇〇ダースを売りまくり、輸入万年筆の三十九%を占める売行きを示したのである。

(梅田晴夫平凡社カラー新書89 万年筆」,平凡社,1978年)

 

今度の”それ”はサックプロテクターに”= 英雄 =”の刻印があります。

しかし、マットさんの記事に「(本物の英雄は)フィラーのサックプロテクター/プレッシャーバーは高度に研磨されています」という記載があるものの、この英雄はどう考えても研磨されているように見えないんですよね。

これも偽物なのだろうか...?疑心暗鬼に陥ります。

 

キャップの仕上げも上等。

今思うと、偽物の英雄616はキャップのクリップも曲がっているし、工作も非常に中途半端、おまけに本体への嵌合もハマりが悪くガバガバだったんですよね。

 

この329はその点本体との隙間もなく、しっかりと嵌まり込みます。

 

 

英雄616と329の違い

329ではパーカーまがいの矢印クリップ(アロークリップ)はなくなり、HEROの刻印が入、60年代の国産万年筆のようにスプリング式のクリップになり、

ペン先に象牙が入りました。

アロークリップは当然ながら世界各国でパーカーの商標登録がされており、その対応としての仕様変更かと思われます。

「紅河(ホンハー)」という北ベトナム製万年筆の日本流入に対して、当然本家のパーカー社は、日本代理店シュリロ社を通じて横浜税関に対して「キャップの矢印のはいったクリップは二十七年に特許庁で商標登録を受けており、これをそっくりマネしてつくった『紅河』は明らかに登録権の侵害」であるとして「輸入差止め」の申請を出したのだが、これに対してわが国の大蔵省関税局は、特許庁の「万年筆クリップの『意匠』は、昭和九年ごろ、日本人が意匠権を登録、しかもすでに権利が切れているので、矢羽根型のクリップを意匠権で差止めることは出来ない。また商標権としては二十七年にパーカー社が、平面図でこの形を登録したが、商標とは本来、商品に付着したものなので、これをクリップという立体物そのものの規制にまで拡張できるかどうかは疑問であるから判断できない」という回答にもとづいて昭和四十三年になって「商標権侵害とするきめ手がない」ので、「紅河」万年筆の日本輸入はみとめざるをえないという結論に到達してしまったのである。

(梅田晴夫平凡社カラー新書89 万年筆」,平凡社,1978年)

英雄のあと、日本にて再び席巻した「紅河(ホンハー)」という北ベトナム製万年筆では商標をめぐって争いがおこったらしい。


カメラではその精密かつ複雑な機構上、模倣が非常に難しく、量産に対して莫大な投資が必要なことから模倣品は一部レンズやバッテリーを除きほぼ出回っていないため、模倣品に対し無頓着でした。

もはや模倣品が市場に出回りすぎて模倣品なのか正規品なのか訳が分からないことになっているとは()海をわたると中華万年筆コレクターが意外と多いことに驚きましたが、なかなか正規品が手に入れられない、このもどかしさが人々を虜にするんでしょうね。

 

腕時計でも、コピー腕時計コレクターなるものが存在するらしく、明らかなコピー品を怪しげなショッピングサイトでポチってはバックレられ、税関に取り上げられ、やっとこさ入手し目方を量ってみたり寸法を測ってみたりと、本物と比べて楽しんでいるらしい...なかには実際に中国深セン時計市場に行くコレクターもいるほど。

 

締めもないので、まぁこんなところです。