先日、手を出さぬまいと思っていた禁断の果実「ジャンク万年筆セット」なるものに手を出してしまいまして、こんな物が手に入りました。
50年代後半から60年代前半と思われるパイロットの鉄ペンです。
各部の意匠が普及型金ペンだったパイロットスーパー60、100にそっくりなので間違ってはいないと思います。
50年代中盤までの胴軸にレバーフィラー吸入器の付いたバランス型からスタイリッシュな埋込み型ニブの流線型に変わった頃のモデルで、まもなく来るカートリッジ式且つショート型までの過渡期なモデルです。
当時(昭和33年)のプラチナのカタログを見ると、金ペンが3,000~1,000円、鉄ペンが600~400円となっていますので、当時の500円前後のペンでしょうね。今で言うなら6,000~4,000円とかでしょうか。
現行パイロットで言うカスタムNSまでいかない、コクーンくらいのクラスです。
到着時、吸入器は取り去られているわ、ペン芯が主軸にハマっておらずスッカスカで押し込むとニブが埋まってしまうほどユルユルになっているわで、破棄しようかと思いましたがほんの興味で使ってみることに。
ペン芯がスッカスカなので仕方無しに接着剤で止めてしまいました。
ジャンクなので許して...
ニブの写真。Lの長い昔のパイロットのロゴ良いですね...
鉄ペンがPILOT SUPER QUALITY刻印なのはこの頃から変わらないのね。
先日購入したパイロット ライティブもこの刻印でした。
面白いのがペン芯と主軸の一体感を出すためか空気穴が樹脂部分には設けられておらず、ニブのハート穴真下に設けられていること。
ちゃんとペン芯も空気穴用に溝が設けられています。
しかしながらこんなところに空気穴を付けて内部のインキタンクと空気循環できるのかしら...?パイロットエリートだと裏に付いていることを思うと...?
始めは現行カートリッジで使用しようと思いましたが、当然ながら規格が違うためスッカスカ。セーラー、プラチナ、ヨーロッパ共通で試してみましたが一番口金の大きいのがパイロットのようで駄目でした。それで一周後述する本用の補修テープにてサイズを合わせ突っ込んでみる。
主軸にカートリッジの蓋を突き破る槍が付いていないため穴をあける必要もありました。
しばらくは書けていたんですが...
内部のペン芯の長さが足りないため途中で蓋が重力で閉まり供給が止まってしまうのです。こりゃ駄目だ。
というわけでコンバーター使用に方向転換。
手元のCON-70Nを刺してみますが、どうやら槍部分で固定するらしく抜けてしまいます。CON-40も同様。
先述の通り、カートリッジの口金が一番大きいのがパイロットでしたから他社も不可。
本来なら槍部分(内側)で止めますが、ペン芯で固定するとインクフローに問題が生じる恐れがあるため外側に本の補修テープを巻き嵌めてみました。
カートリッジより余裕があり3周補修テープを巻き丁度いいくらい。
ちなみに使用した補修テープは以下
https://www.amazon.co.jp/dp/B00D3UOBHC/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_4WG76A8B1DWHSKV5912Z
こんな感じ。違和感はないかな。
字幅表記が全く無いのでどんなもんかと思いきや、細字から中字の間ですね。
同時期発売されていた金ペンよりニブサイズが小さく設計されていますが、その分若干の柔らかさも併せ持っており書きやすい印象です。
キャップの剥がれを思うに相当使い込んだのかペン先は結構摩耗しており滑らかで書きやすい...かな?
ちなみにキャップは金張りのように(金ではない)アルミ製のキャップに光沢のある金属箔を張り合わせたものです。質感は良いけど剥がれるとダサいですね。
そういえば、先日視聴していた「下町の太陽」(1963年、松竹)内で「お兄ちゃんは新聞配達をして万年筆とか自分で買ったんだからね?(意訳)」というシーンがありましたが多分こんなペンだったんでしょう...
<追伸>
ペン芯の写真を見ると「6.57」の刻印がありました。57年6月製ですね。
各部の工作は進歩した様子はありませんが、それだけ完成されていたということでしょう。利便性は向上しています。
吸入器が破損したあとのことを思うと容易に交換できる両用式は素晴らしい利便性を持つということを再認識しました。
...しかしどうやらタガが外れてしまったようでパイロットスーパーなんか物色しています。
では。