ニッカIII-Sの幕交換をした記事にも書いた覚えがありますが、二年前?に幕交換したキヤノンIIIが底部アイドルギアとシャッタードラムの分解清掃を怠ったためにシャッター鳴きが酷いんですよね。
10回に1回と書いてありますが、遂には5回に3回くらい出るようになってしまいました。幕変えてから一本しか使ってないのに...
私のキヤノンIII型。
1951年2月発売、新考案のシャッター幕掛け止め装置を搭載しキヤノンでは初めての1/1000を達成した機種です。なんてったって1/1000搭載はカンノンの構想機以来の待望でありましたから一つ理想に近づいたんでしょう...
カンノンに搭載される計画だった1/1000に金属シャッター、キヤノンIII型(仮称)に搭載される計画だった外爪バヨネット、フロント側レリーズといった機能を代を重ねるごとに着実に実用化して行ったんですよね。
キヤノンIII型(仮称)はこのキヤノンIII型とは全くの別物です。
ちなみに1952年4月には外部の意匠と内部シャシー(あとで書くけど)をダイカストへと変更したキヤノンIIIA型が発売されますのでキヤノンIII型は1年2ヶ月で幕を閉じました。
つまるところ、このキヤノンIII型は1951年2月~1952年4月製造のわけで今は2021年5月、ちょうど古希なんですね。おめでとうございます(?
底板はシンクロ搭載のキヤノンIV型と共用のためいくつかネジ穴が開けられています。
ここと低速ダイヤル部分の足りない部品を足しモナカを変えればそれはキヤノンIV型になるんじゃないかしら。そういうアップグレードサービスはライカにはありますが
距離計部分がヤスリがけされているのに時代を感じます。
スローガバナー
キヤノンIVSb改良型になると1/15が付加され二段のアンクル開放タイプになります。
追加で。左がキヤノンSII(1946)、右がキヤノンIIB(1949)のスローガバナー。
1951年のキヤノンIII型のスローガバナーと比較すると雲泥の差です。
底板を外したところ。
これがアイドルギア
これがキヤノンIII型から追加されたシャッター幕掛け止め装置。
レリーズボタンが押されると板バネに引っ張られて中央の棒が下がり掛け止めが外れる仕組み。
たった10点にも満たない部品を添加しただけで「特別な機構」なんて宣伝してたんだから今の感覚からすると「?」ですね。
ちなみにライカとは全く別の機構です。向こうの機構はこの頃には既にありましたが組付けがシビアなのでこちらの方が優秀かも?
シャッターのスプリングドラム。
おそらく70年前のグリスが塗布されたままですから油分が飛んで白化しています。
清掃給脂しました。
シャッタードラム
随分と汚れています。
一度やってみたかったやつw
単純な機構のカメラですが、並べてみると部品点数多いですね。
摺動部には銅製ワッシャー、調整部には真鍮製ワッシャーが挟まっているのでそれで点数が上がってる感。
組み付けました。ライカのほうがシャッタードラムの組付けはやりやすいのよね。
シャッター幕制作に入ります。
できました。上が後幕、下が先幕。
(遮光カバー組付けた後だけど)シャッター幕の組み込み
一夜置いてシャッタースピード調整して終わり。
にしても工場でどう量産していたんでしょうね。接着剤硬化待ちのカメラが大量に並んでいたのかしら...?
これが例の板金フレーム。後年のダイカストは写真ないけど、もう少し肉厚になります。
色々付けておわり。
「アサヒカメラ 昭和26年11月号」(朝日新聞社 1951)
キヤノンIII型の広告。
日本光学と決別して3年少し、交換レンズも一通り揃ってきた頃ですかね。
前年1950年にはかの伊藤宏氏もキヤノンカメラに入社し、かのセレナー50mm F1.8が発売されるのはこの一年後です。
キヤノンSII(1946)、キヤノンIIB(1949)、キヤノンIII(1951)、キヤノンIVSb(1952)、キヤノンIVSb改(1954)と流れを追って分解してきましたが年々向上する品質と精度には驚きます。販売戦略もよく言われるところですが、こうして格段と品質を向上させた頃があったからこその世界一のシェアを誇るメーカーにのし上がったんだなと思うんですよね。