にこらのブログ(カメラ修理館)

クラシックカメラを修理、収集している学生のブログです。

【依頼品】CANON IID改

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某氏からの修理依頼品です。

修理依頼ってか、色々な事情で私が買わせたに近いものですけど。

 

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恐らく一度修理に出されたのか先幕だけ挟み込み幕になっていました。

あとテンションが無茶苦茶強い。

 

後幕がご覧の有様で漏光もしてるので交換しなきゃいけません。

よく先幕だけ交換するとかいうメニュー内容のカメラ修理屋がありますがほんと謎いんですよね。同時に取り付けられている先幕と後幕ですから劣化度合いは変わらないのに。

まぁ、先幕はテンション軸で強い曲率で取り回されるので劣化すると割れやすいからなんですかね、劣化したあとの話ですから両方交換するに越したことはないですけど。

 

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これが付いていた挟み込み幕

両面絹幕で随分ときれいな幕です。

なんたって接着剤が5mm幅しか付いてないんですもの。リボン側も同様。

よくもまああんな強いテンション掛けられて使用途中に切れなかったな...

 

にしてもこのシャッター幕、どっかで見たことがある気がするんですよね。

ミノルタかしら?そういやミノルタは21世紀に入ってもX-370sで布幕機作ってましたしね。

 

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久々のキヤノンレンジファインダー機なので喜び勇んで分解。

 

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シャッターの作動動力源となるスプリングドラムですが、品質の安定してきた頃のキヤノンにしては珍しく錆びていました。

 

随分前にニコンSをやった際も錆びついていましたが、今回はそれほどでもありませんね。

nikora060.hatenablog.com

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ニコンSを分解修理した際の写真)

なぜかニコンSと同じく後幕のスプリングだけ錆びてますね。なんでだろ。

 

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軽く表を研磨し洗浄すると綺麗になりましたね。

 

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キヤノン独特のシャッターブレーキ機構

改良型になると幕速が高速化したためか(1/25→1/30)シャッターブレーキの作動が強くなります。

そのため巻き上げ始めの感触が旧来型に比べ固くなってしまい、細かいところではあるものの私が旧来型を好む理由だったり。利便性なら圧倒的改良型なんですけどね。

 

ここを手抜いて痛い思い出がありますので分解清掃しました。

 

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これはキヤノンIII型のシャッターブレーキ機構

ほっとんど変わりませんね。

 

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一通り組み終わりました。

シャッター幕の竿は無いものは仕方ないんで部品取り機から拝借

 

しかしここで問題発生、スローガバナーが作動しない...

えーっ、スローガバナー取り外して分解清掃(&注油)した際には普通に作動していたのに。

 

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一度取り外して見てみるとグリスが塗りたくられた跡が。

ここには油いらないはずなんだけどな。

拭って取り付けて見るもやはり作動しない。

どうやらテンションを思っきり強くすると作動するようになる様子。

 

ん~?だからもともとあれだけテンションが強かったのか?

 

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キヤノン独自の二段ガバナー

そいや旧来型のワンウェイクラッチ式ではなくアンクル切り離し式になったことを思い出しもう一度分解してみる。

 

旧来型にはなかったアンクルの当たり量調整用ネジを発見。

はへー、今まで気にも止めていなかったから存在を知らなかった...

 

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キヤノンIII型のスローガバナー(SII~IVSb共通)

旧来型にはアンクルの調整ネジはそもそも存在しないのです。

 

アンクルの当たり量を調整するとふつーのテンションでも作動するようになりました。

 

恐らく前の修理屋はテンションを異様に上げる→スローガバナーの作動が早くなる→ガバナーのアンクル当たり量で調整。って流れなんでしょうなー。

 

旧来型だったらどうするつもりだったんだろうねー

 

前々回から今までとは違う速乾性の接着剤を使い始めたのでいくらか効率が良くなりました。キヤノンらしい巻き上げ感触になって満足。

 

では。